ホントノ キモチ。 ホントノキモチ(人生通行止め)

ホントノキモチ -11- : kobu's sketch

ホントノ キモチ

久方ぶりに静かな夜を迎えていた。 父上がお倒れになって以来か。 こんな時間に東宮殿に戻れたのは。 自室のソファに座りアルフレッドを抱え込むと、ため息をつく。 忙し過ぎる・・・あまりにも。 この僕をして、目の前のことをこなすので精一杯。 公務の一番の繁忙期にあたる今、為すべきことは多く・・・ 友人たちをはじめチェギョンにすらときちんと話す時間がほとんど取れない。 皆心配してメールをくれるが、レスすらろくに出来ない。 今日姉さんが帰国して手伝ってくれることが決定し、正直安堵していた。 父上は精密検査もほぼ終えられ、このまま経過に問題が無ければ程なく退院されて温洋の御用邸にて療養される。 公務への復帰はまだまだ先のことだろう。 『皇帝とは寂しく孤独なもの』 父上が仰った言葉を反芻し、何度も考える。 やればやるほど学業と公務の両立は難しいものだということがよく判ってきた。 いずれ継がねばならない皇帝という名前の重さをひしひしと感じている。 立ち上がると、ドア近くからそっと向かいのあいつの部屋を伺う。 迎えに出て来なかった、ということは部屋にいないのだろう。 何処で何をしているのか? なんで僕が早く帰った時に限って、あいつがいないんだ! コン内官に聞いておけばよかった、と今更思う。 顔を見たい。 ・・・ゆっくり、話をしたい。 あいつも忙しいんだ。 お妃教育に加えて、これから本格的に公務も入ってくるだろう。 直近で予定されている公務は英国のウィリアム王子の来韓、それにタイ訪問。 皇帝夫妻が訪問予定だったタイへの訪問は、おそらく延期となるだろうが・・・ ずっと忙しくて、正直なところ心に余裕がなかった。 チェギョンともせいぜい迎えに行ってやる時くらいしか話せない。 あいつの怪我は未だに治らなくて、手の包帯を見る度に心がずきりと痛む。 それでもその一緒にいる短い時間が僕にとって貴重なひと時だった。 他愛もないことを一生懸命話しかけてくるあいつ。 ひと時だけでも重責を忘れていられ、なんだかほっとする。 『妻』なのに、一番近くにいるのに、なんでこんなもどかしい想いを抱えているんだ、僕は。 素直に会いたいって言って、探しに行けばいいじゃないか・・・! 主のいない部屋を見てまたため息をつくと、頭を振ってベッドに寝そべった。 目に入る積み重なった本や雑誌。 読めずにいた雑誌を手に取りぱらぱらとめくってみるが、頭に入らない。 疲れていた。 気を抜くと疲労が澱のように積み重なっているのを嫌でも自覚してしまう。 「トントン」 顔を上げたら、・・・! チェギョン! ドアから可愛らしく顔を覗かせる。 「お帰りなさい!今日は早いんだね」 「・・・予定していた公務が早く終わったんだ」 「そっか。 ・・・シン君、大丈夫?」 「何が?」 「毎日忙しいから、疲れてるでしょ」 心配そうに僕を見る。 そんな目をされたら・・・嫌でも虚勢を張りたくなる。 「大丈夫だ」 「駄目だよ、無理しちゃ!」 「僕を誰だと思っている。 そんなにやわじゃない」 「ホントに・・・?」 「心配するな」 疲れてはいるが、余計な心配はさせたくなかった。 「よかった・・・あのぅ・・・今、いいかな?」 「ああ」 ちょっと口を尖らせて、遠慮気味に部屋に入ってくる。 ベッド脇の椅子にちょこんと座った。 「なんか夜は寒いね・・・さっき風邪薬飲んできたけど、ぜんぜん効かないよ~」 「・・・風邪をひいたのか?」 「ん?風邪気味だったから、念のため薬を飲んだの。 今日外で絵を描いてたら、急に雨が降ってきて濡れちゃって」 「絵?・・・まさか、ユルと?!」 「・・・うん、くしゅん!!」 えへへ、だいじょーぶと笑うあいつに、思わず言った。 「入れよ」 「へ?」 「竹炭のマットが敷いてある。 暖かいから」 ブランケットをはいで、ベッドへ誘う。 キングサイズの特注ベッドは当然ながら二人で寝ても余裕のスペースで、しかも暖かだ。 え!?とお前は思い切り仰け反ってから、「でも~」と口を尖らせている。 「・・・何日も一緒に寝た仲だろ」 「ぅ、うん」 ・・・別に下心なんてない。 心中密かに言い訳する。 風邪をひかないようにって思っただけだぞ。 ちらつくユルの影を頭から追い払うため、冷静を装いつつ少しだけ大胆に振る舞っていることは事実だけど。 少しだけしなるベッドのスプリングに、僅かに緊張するのは何故なのだろう。 「気持ちい~」 にこにこしながら僕を見上げる。 思わず微笑んだ。 「・・・あのね」 突然言いにくそうなそぶりを見せ、チェギョンは呟いた。 「なんだ」 「もしかして・・・ユル君って、私の許婚だったの?」 ! 突然のことに、動揺し息を呑んだ。 ・・・どうして急にそんなことを言い出す? 唇をかみ締めた。 言葉が出て来ない。 聞こえないように息を吐くと、一呼吸して置いてから話し出す。 「・・・先の皇帝陛下である僕のおじい様がお前のおじい様に約束したのは、皇位継承者との婚約だったと聞いている。 ユルの父君、僕の伯父上の考烈皇太子が不慮の事故で亡くなられる前までは、ユルが皇太孫だった。 だから・・・ユルは一時期、確かにお前の許婚だった」 「そっか・・・」 僕を見ずに、あいつはぼそぼそと呟く。 「今日ユル君にそんな話をされて・・・なんだか・・会うのが気まずくて・・・」 ユル! そんな話をしたのか。 『僕はチェギョンにプロポーズする』 気が付くと、拳を強く握り締めていた。 今、言おう。 上手く言葉にできるか、わからない。 でも、自分の本当の気持ちを伝えるんだ。 聞いて欲し」 意を決して声にしたのに、それは無残にも途中で断ち切られる。 傍らのチェギョンは。 ・・・既に、夢の中だった。 安らかな寝息が聞こえる。 はぁ・・・ 一気に身体の力が抜ける。 額に手を当てて、それから天を仰ぐ。 こんなにも身体に力が入っていたことに気付いて、苦笑した。 風邪薬が効いてきたのか・・・? お前は本当に寝つきがいいよな。 起こさないように、優しく額に触れた。 熱は無さそうなので安堵する。 そういえば、この前ここでお前に額を触られたっけ。 あの夜、僕は初めて自分の本当の気持ちに気付いた。 あれからそんなに経っていない。 それなのに、自覚した僕の心は不思議なくらいにどんどんお前に傾いていく。 まいったな・・・止められない。 愛おしさがまた込み上げてくる。 ・・・台無しになったのだから、これくらいは許せよ。 勝手な理由を付けた僕は、柔らかな頬にまた唇を寄せる。 それからため息をついて、ブランケットをかけ直した。 下心はないなんて、・・・嘘だ。 好きな女に触れたくない男なんて何処にいるんだよ。 でもここから先は、想いを伝えてからにしないとな。 寄り添って、そっと寝顔を見つめる。 ぐっすりと眠る姿は、あどけなく可愛らしい。 せっかく告白しようとした、たった一つの言葉。 自分の妻に想いを伝えることが・・・こんなに難しいなんて。 そろそろチェギョンを起こして自分のベッドで休ませた方がいい。 そう思っているのに、身体が一向に動こうとしない。 心地良いぬくもり。 温かいな。 もう少しだけ、こうしていたい・・・ かなり疲れていたのだ、と思い知ったのは翌早朝のこと。 コン内官が東宮殿のドアを開ける音を聞いた時だった。

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ホントノキモチ -30- : kobu's sketch

ホントノ キモチ

すっごい人っ!!! 記者、カメラマン、レポーター、それにあれってシン君ファンの追っかけの人達? それ以外にもたくさんの人! なかなか高校の敷地内に入れない。 車の中で口をあんぐり開けて外を見ている私に、シン君が言う。 「口は閉じていろ。 そのままだと撮られるぞ」 慌てて開いた口を押えた私を見て、シン君はふっと笑ってから言った。 「・・・まさかここまで集まるとはな」 二人揃って登校するのは、あの宮の発表以来初めて。 一緒に登校する私たちを見るためにこんなに人が集まったらしいの。 「少しお時間をいただきます」 車を運転している翊衛士のお兄さんが、先導の車にいる別のお兄さんとインカムで交信してから言った。 どうやらまだこの先にも多くの人がいるみたい。 「・・・シン君」 「なんだ、怖いのか?」 「え゛!何でわかったの!?」 「顔が引きつっている」 ひゃっ! ほっぺに手を当てた。 そんな私をシン君は面白そうに見ている。 「分かり易過ぎだな」 「・・・だってここまですごいのって初めてなんだもん。 何かあったらどうしよう」 シン君がまたふっと微笑む。 そのままちらっと伺うように私を見て、何か考え込むようにして。 私を見ないまま、そっと手を握った。 そのまま自分の膝の上に乗せる。 ドキドキ、するっ・・・! 「心配するな。 翊衛士は有能だ。 こういうことに慣れているから、安心して任せていればいい」 「・・・う、うん」 もー、反則だよ! なんだかコワイって思ってたのに、そんなこと一気に吹き飛んじゃった・・・ シン君の温かい大きな手。 昨日の夜を思い出して、赤くなる。 キャー!!! 私ってハシタナイ~!?それとも、変態っ!?? 思わず叫び出しそうになって、首をブンブンと振ったら、シン君がこっちを見てる。 慌ててえへへって笑ったら、いぶかしげな顔をした。 朝シン君と顔を合わせるのが、恥ずかしかったな。 勇気を出して先に「おはよ!」って言ったら、ほっとしたように笑って「おはよう」って言ってくれた。 シン君が冷たく見える時がたくさんあった。 でも今はぜんぜん違う。 あいかわらずからかわれたり、ちょっとイジワルされたりするけど・・・ ちゃんと、ううん、すごく優しい。 どんどん、どんどん惹かれてく。 もっと、もっとシン君のことが知りたい。 シン君のことが、大好き・・・・ 隣にいるシン君をコッソリ見上げる。 シン君は唇を結んで前を見てる。 キレイな横顔・・・ いつものクールなシン君。 私だけだよね、きっと。 シン君のこと、こんなに想ってるって。 こんなにどきどきしてるのって・・・ 「チェギョン」 「え?」 シン君の横顔に見とれてぼーっとしてたら、シン君がコホンと咳払いしてる。 なに?? 「・・・今日、ユルが登校する」 「ホント!?」 ユル君・・・ よかった、元気になったんだね。 「ユルとは出来るだけ話すな」 「はぁ?無理よ、そんなの無理!ユル君はクラスメートだよ。 席だってユル君の前だし」 「あんなことを言われてもかっ!」 「そうだけど・・・でも大事な友達だもん!」 「駄目だ!」 見るとシン君の顔がどんどん不機嫌になっていく。 もー、どうしてそんな顔するのっ! 「大丈夫!心配しないで。 ・・・何かあったらちゃんと言うから」 「何を!」 「正直なキモチ」 「はぁ?」 「だ・か・ら!・・・私の気持ち、よ!」 「・・・何て、言うつもりだ」 シン君が真剣な瞳で私に迫ってくる!! 「し、シン君っ!近すぎ!!!」 「五月蠅い。 さっさと言え!」 「ユル君は大切な友達で。 じっと私を見ていたシン君、急に少し照れくさそうでそして満足げな顔をした。 「・・・とにかく、今は出来るだけ距離を置け。 絶対に二人きりになるな!」 「大丈夫だよ」 「駄目だ、帰りは迎えに行く。 でもユルとは一緒にいるな」 「・・・シン君ってやっぱり心配性なんだ」 「お前が明朗病過ぎるんだっ!」 くすっと笑うと、シン君はちょっとだけ口を尖らせていた。

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ホントノキモチ(人生通行止め)

ホントノ キモチ

久方ぶりに静かな夜を迎えていた。 父上がお倒れになって以来か。 こんな時間に東宮殿に戻れたのは。 自室のソファに座りアルフレッドを抱え込むと、ため息をつく。 忙し過ぎる・・・あまりにも。 この僕をして、目の前のことをこなすので精一杯。 公務の一番の繁忙期にあたる今、為すべきことは多く・・・ 友人たちをはじめチェギョンにすらときちんと話す時間がほとんど取れない。 皆心配してメールをくれるが、レスすらろくに出来ない。 今日姉さんが帰国して手伝ってくれることが決定し、正直安堵していた。 父上は精密検査もほぼ終えられ、このまま経過に問題が無ければ程なく退院されて温洋の御用邸にて療養される。 公務への復帰はまだまだ先のことだろう。 『皇帝とは寂しく孤独なもの』 父上が仰った言葉を反芻し、何度も考える。 やればやるほど学業と公務の両立は難しいものだということがよく判ってきた。 いずれ継がねばならない皇帝という名前の重さをひしひしと感じている。 立ち上がると、ドア近くからそっと向かいのあいつの部屋を伺う。 迎えに出て来なかった、ということは部屋にいないのだろう。 何処で何をしているのか? なんで僕が早く帰った時に限って、あいつがいないんだ! コン内官に聞いておけばよかった、と今更思う。 顔を見たい。 ・・・ゆっくり、話をしたい。 あいつも忙しいんだ。 お妃教育に加えて、これから本格的に公務も入ってくるだろう。 直近で予定されている公務は英国のウィリアム王子の来韓、それにタイ訪問。 皇帝夫妻が訪問予定だったタイへの訪問は、おそらく延期となるだろうが・・・ ずっと忙しくて、正直なところ心に余裕がなかった。 チェギョンともせいぜい迎えに行ってやる時くらいしか話せない。 あいつの怪我は未だに治らなくて、手の包帯を見る度に心がずきりと痛む。 それでもその一緒にいる短い時間が僕にとって貴重なひと時だった。 他愛もないことを一生懸命話しかけてくるあいつ。 ひと時だけでも重責を忘れていられ、なんだかほっとする。 『妻』なのに、一番近くにいるのに、なんでこんなもどかしい想いを抱えているんだ、僕は。 素直に会いたいって言って、探しに行けばいいじゃないか・・・! 主のいない部屋を見てまたため息をつくと、頭を振ってベッドに寝そべった。 目に入る積み重なった本や雑誌。 読めずにいた雑誌を手に取りぱらぱらとめくってみるが、頭に入らない。 疲れていた。 気を抜くと疲労が澱のように積み重なっているのを嫌でも自覚してしまう。 「トントン」 顔を上げたら、・・・! チェギョン! ドアから可愛らしく顔を覗かせる。 「お帰りなさい!今日は早いんだね」 「・・・予定していた公務が早く終わったんだ」 「そっか。 ・・・シン君、大丈夫?」 「何が?」 「毎日忙しいから、疲れてるでしょ」 心配そうに僕を見る。 そんな目をされたら・・・嫌でも虚勢を張りたくなる。 「大丈夫だ」 「駄目だよ、無理しちゃ!」 「僕を誰だと思っている。 そんなにやわじゃない」 「ホントに・・・?」 「心配するな」 疲れてはいるが、余計な心配はさせたくなかった。 「よかった・・・あのぅ・・・今、いいかな?」 「ああ」 ちょっと口を尖らせて、遠慮気味に部屋に入ってくる。 ベッド脇の椅子にちょこんと座った。 「なんか夜は寒いね・・・さっき風邪薬飲んできたけど、ぜんぜん効かないよ~」 「・・・風邪をひいたのか?」 「ん?風邪気味だったから、念のため薬を飲んだの。 今日外で絵を描いてたら、急に雨が降ってきて濡れちゃって」 「絵?・・・まさか、ユルと?!」 「・・・うん、くしゅん!!」 えへへ、だいじょーぶと笑うあいつに、思わず言った。 「入れよ」 「へ?」 「竹炭のマットが敷いてある。 暖かいから」 ブランケットをはいで、ベッドへ誘う。 キングサイズの特注ベッドは当然ながら二人で寝ても余裕のスペースで、しかも暖かだ。 え!?とお前は思い切り仰け反ってから、「でも~」と口を尖らせている。 「・・・何日も一緒に寝た仲だろ」 「ぅ、うん」 ・・・別に下心なんてない。 心中密かに言い訳する。 風邪をひかないようにって思っただけだぞ。 ちらつくユルの影を頭から追い払うため、冷静を装いつつ少しだけ大胆に振る舞っていることは事実だけど。 少しだけしなるベッドのスプリングに、僅かに緊張するのは何故なのだろう。 「気持ちい~」 にこにこしながら僕を見上げる。 思わず微笑んだ。 「・・・あのね」 突然言いにくそうなそぶりを見せ、チェギョンは呟いた。 「なんだ」 「もしかして・・・ユル君って、私の許婚だったの?」 ! 突然のことに、動揺し息を呑んだ。 ・・・どうして急にそんなことを言い出す? 唇をかみ締めた。 言葉が出て来ない。 聞こえないように息を吐くと、一呼吸して置いてから話し出す。 「・・・先の皇帝陛下である僕のおじい様がお前のおじい様に約束したのは、皇位継承者との婚約だったと聞いている。 ユルの父君、僕の伯父上の考烈皇太子が不慮の事故で亡くなられる前までは、ユルが皇太孫だった。 だから・・・ユルは一時期、確かにお前の許婚だった」 「そっか・・・」 僕を見ずに、あいつはぼそぼそと呟く。 「今日ユル君にそんな話をされて・・・なんだか・・会うのが気まずくて・・・」 ユル! そんな話をしたのか。 『僕はチェギョンにプロポーズする』 気が付くと、拳を強く握り締めていた。 今、言おう。 上手く言葉にできるか、わからない。 でも、自分の本当の気持ちを伝えるんだ。 聞いて欲し」 意を決して声にしたのに、それは無残にも途中で断ち切られる。 傍らのチェギョンは。 ・・・既に、夢の中だった。 安らかな寝息が聞こえる。 はぁ・・・ 一気に身体の力が抜ける。 額に手を当てて、それから天を仰ぐ。 こんなにも身体に力が入っていたことに気付いて、苦笑した。 風邪薬が効いてきたのか・・・? お前は本当に寝つきがいいよな。 起こさないように、優しく額に触れた。 熱は無さそうなので安堵する。 そういえば、この前ここでお前に額を触られたっけ。 あの夜、僕は初めて自分の本当の気持ちに気付いた。 あれからそんなに経っていない。 それなのに、自覚した僕の心は不思議なくらいにどんどんお前に傾いていく。 まいったな・・・止められない。 愛おしさがまた込み上げてくる。 ・・・台無しになったのだから、これくらいは許せよ。 勝手な理由を付けた僕は、柔らかな頬にまた唇を寄せる。 それからため息をついて、ブランケットをかけ直した。 下心はないなんて、・・・嘘だ。 好きな女に触れたくない男なんて何処にいるんだよ。 でもここから先は、想いを伝えてからにしないとな。 寄り添って、そっと寝顔を見つめる。 ぐっすりと眠る姿は、あどけなく可愛らしい。 せっかく告白しようとした、たった一つの言葉。 自分の妻に想いを伝えることが・・・こんなに難しいなんて。 そろそろチェギョンを起こして自分のベッドで休ませた方がいい。 そう思っているのに、身体が一向に動こうとしない。 心地良いぬくもり。 温かいな。 もう少しだけ、こうしていたい・・・ かなり疲れていたのだ、と思い知ったのは翌早朝のこと。 コン内官が東宮殿のドアを開ける音を聞いた時だった。

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